閉鎖環境の水中で潜水を行うテクニカルダイビングは、高度な技術を必要としながらも、正しく行なえば安全にダイビングすることのできるスポーツです。
数あるスポーツダイビングの中で特に安全性の配慮が強く、長い歴史と積み重ねに裏づけされた、完成度の高い技術体系でもあります。
テクニカルダイビングの歴史は古く、1950年代には既に洞窟や沈没船など、閉鎖されたオーバーヘッド環境でのダイビングが始められていました。
本格的に取り組むケースが増えたのは1980年代のことで、それまでに培われてきた潜水技術を元に、混合ガス潜水の技術が確立されています。
仮想天井を設けて減圧停止をすることにより、1つの壁だった水深40m~100mの潜水ができるようになりました。
安全に潜水ができることをレジャーダイビングといいますが、1990年代以降は専門雑誌などで取り上げられ、テクニカルダイビングのという言葉が普及しています。
スポーツダイビングやレジャーダイビングなどの1種に位置づけられ、レクリエーショナルダイビングとは一線を画します。
しかし、レクリエーショナルダイビングはレジャーダイビングの基礎で、安全を重視した基準になっています。
テクニカルダイビングでは、頭上に何らかの障害物がある状態で潜水をしますから、水中でトラブルが生じても直ぐに浮上をするのは不可能です。
その為、万が一の状態を想定して念入りに準備をしたり、トラブル発生時に冷静さを失わないことが求められます。
潜水ルートの確保は不可欠ですから、内部構造を把握すること、注意すべきポイントなどを理解するのも重要です。
水中では視界が遮られたり方向や位置を見失うなど、オーバーヘッド環境ならではの怖さがあります。
混乱して取り乱せば、余計に状況が分からなくなってしまったり、問題解決が遠のくことになります。
だからこそテクニカルダイビングは十分な知識と経験、そして信頼できる装備を欠かすことができないわけです。
自信過剰な人は想定外の事態に弱いので、多少慎重過ぎる人の方が上手く挑戦できるでしょう。
勿論、挑戦しなければ自信はつきませんから、経験者のもとで少しずつ経験を積み重ね、自分1人で挑戦できる範囲を広げていくのが上達の基本です。
このダイビングの魅力は、普段立ち入ることが難しい場所に入れたり、閉鎖環境ならではの日常と切り離された空間に身を置けることです。
当然ながらリスクと隣り合わせですが、そういうスリルを魅力に感じたり、危険を承知で頻繁に潜る人も少なくないです。